■2018.08
日めくり 2018年08月(平成30年) ◄►
2018.08.01(水) 気象観測史上新記録
「そういえば最近、夏バテって言葉聞かなくなった」
知人とこんな会話を交わしたのだが、
確かに「危険」「命を守れ」が繰り返された7月。
夏バテなんて悠長な表現を使っている場合でもないのだろう。
気象観測史上で前例のない連日の猛暑日が続き、
関東で平均気温の記録を更新したらしい。
毎年のように何らかの観測記録を更新している気もするが。
夏休みといえば海水浴だろうが、
「外出は控えましょう」とはどういうことだ。
海水浴か・・・・・最後に海で泳いでからどれくらい経つのだろう。
2018.08.02(木) 東京医大、女子受験者を一律減点
酷いニュースだと思うが、それほど凄いニュースとは思わなかった。
私の中で「そうでもしないと男は絶対に女に勝てん」との思いがある。
もちろん不正は不正。そこはとことん追求しなければならないにしても、
文科官僚の息子の不正入学事件ではないが、女子の裏口入学はあまり聞いたことがない。
私は成績上位の優秀な人たちの世界はあまり知らないが、
少なくともクラスで落ちこぼれといえば圧倒的に男ばかりだった。
間違いなく生物学的に男より女が圧倒的に優生なのだろう。
男は妊娠・出産という女のインターミッションの間隙をつくことで、
男が支配出来る社会システムを作って、なんとか君臨しているだけではないのか。
「女子受験者を一律減点」も間違いなく男たちが画策した社会システムの一環。
ことほどさように男は情けなく、女は優秀だということだ。
何十年か前にヤクザの親分と酒の席をともにする機会があったとき、
その親分がしみじみといった。
「あまり女が社会に出ると、男はとことん働かなくなっちゃうぞ」と。
私はこの一言がすべてではないかと未だに信じている。
2018.08.03(金) 17のころ・・・『レディ・バード』を観て
カトリック系スクールに通うカリフォルニアの片田舎に住む17歳の女の子の話。
57のおっさんでも、国も性別も年代も一気に超えられる魔力が映画にはある。
そうだ、大学に入った時、上京してきた同級生たちに軽く嫉妬を覚えたものだった。
ひとり住まいのアパートを決め、大都会に迷いながら目を輝かせていた彼ら。
私のように首都圏で生まれ育った人間には得られない上京物語があったのだろう。
少なくとも彼らには17歳かそこらで、地元か上京かを選択する瞬間があったのだ。
ATG『祭りの準備』を初めて見たのが17歳の時。
主人公とは同年代でも、故郷への呪縛とそこから旅立つ開放感がわからなかった。
作風はまるで違うが、『レディ・バード』も祭りの準備を描いた映画だ。
クリスティンは自称レディバードを名乗りながら故郷から旅立とうとする。
学園生活に退屈しながらそれなりに謳歌もし、地元でやり残したものなどない。
そこに立ちはだかるのは母親の存在。故郷=呪縛の象徴として母親がいる。
この母からは愛されたいが、とにかく呪縛からは逃れなければならない。
そう、わたしには翼がある、のだと。
一方、スネ齧りだった私は母親から逃れたくとも逃れられず、
人生を都会で生きていくことを当然としながら、自分の殻に閉じこもっていた。
だから映画の魔力に身を委ねながらクリスティンを「さあ飛べ」と応援していたのだ。
全米4館からスタートしたと聞くが、小さなスタジオには手作りの良さがある。
2018.08.04(土) 唖然とする検査結果
呼吸器科の診断を受ける。
肺活量の測定など小学生以来ではなかろうか。
思いっきり息を吸い込んで、思いっきり吐く。
息を吸い込んでもなお吸い込めと指示され、思わず咳き込む。
「もう一度やりましょう」
これだけのことが出来ないことに自分で唖然としながら、
何とかやりきるが、今度は溜めた息を思いっきり吐く測定だ。
これもなかなかつらい。顔が真っ赤になっているのが自分でもわかる。
想像を絶する文字がプリントされる。唖然とする検査結果だ。
「あなたの肺年齢は81歳です」
は、81歳、え?・・・・・・
2018.08.05(日) 新盆
叔母の新盆が前倒しで行われた。
死に際して49日、新盆と儀礼は続くが、
もちろん略式でも、律儀に執り行う叔母の家族はとてもエライと思う。
我が家の場合はどうだろう。
もちろん葬式は出すにしても、その後の法事まできっちり出来るものなのか。
親子三人、住処はバラバラだが、ひとりも欠けることなくここまで来れたこと。
せめて新盆くらい、殊勝に感謝してみるのもいいだろう。
2018.08.06(月) 今日から歯医者通い
たまには思い出せや、といわんばかりに右奥歯が疼いてくる。
指で触ると少しぐらつく。
久々に歯医者に行く。レントゲンを撮ると大分歯茎が細くなっているという。
朝起きると軽い痛みが残るのは、就寝中、歯をギリギリ食いしばっている証拠。
そのための部分入れ歯だったり、マースピースだったりするのだろうが、
そんなものはとっくに放置している。もう歯茎も変形しているだろうから使えない。
とりあえずタバコとコーヒーとお茶で変色した歯を機械で磨いてもらう。
正直、それが目的でもある。
今思えば、50代から現れた様々なガタつきの発端は歯だったか。
歯石が取り除かれてスースーさせながら、そのことを思う。
2018.08.07(火) ロサリオ満塁弾! ~東京ドーム
なにごとにも代えられないもの。
東京ドームで「あと一人!」「あと一球!」をコールする時の気持ちよさ。
その気持ちよさをある程度約束する満塁弾がロサリオのバットから放たれる。
メジャー通算71本塁打。韓国リーグで2年連続で打率3割、30本塁打。
この実績をタイガースは優勝の夢先案内人として3億4千万で獲得した。
外野エリアが広く、右から左へ浜風が押し戻す甲子園では待望の右の大砲だ。
そのロサリオを中心に中谷、大山、高山の若手が絡み、福留、糸井が支える。
まさにVのシナリオ。……別名“絵に描いた餅”だった。
分厚いはずの打線は泣かず飛ばず。
とくにドミニカ期待の大砲は貧打の象徴になった。
そもそも疑問なのは内角で体を起こして外角のスライダーで仕留めるという、
典型的な外国人打者攻略法にいとも簡単にはまり続けていること。
いや内角など必要ない。外に投げればほぼ自動三振だ。
この課題を何故、今に至っても繰り返し続けているのか。
日本人独特の投球術?
韓国でもスライダー投手はいくらでも居ただろうに。
片岡打撃コーチの人智に及ばぬ何かがロサリオにあるのだろうか。
そんなロサリオの一発がドームの左中間スタンドに放り込まれる。初回でのことだ。
初回―。滅多に見られない光景も初回に放たれたのではどうしようもない。
平日に野球観戦で早退するわけにはいかない。定時上がりさえ無理だった。
夏休みなのでスタンドはそこそこ埋まっていたが、勤め人に6時プレーボールは酷だ。
球場に到着したのは四回裏。タイガースのリードは2点に縮まっていた。
そのあとで福留、糸井の連続タイムリーが飛び出すものの、
大城、陽に連続ホームランを浴びて再び2点差。
遅刻して初回を見逃した観客にはどっちが勝っているのかよくわからない展開だ。
はやり野球はプレーボールから観ておくべきなのだ。
見逃したロサリオの満塁ホームラン。思い出にもなりゃしない。
2018.08.08(水) サマータイム導入?やめとけって
不思議に思うのはサマータイムを導入したところで何が変わるのか?ということ。
夏冬で日照時間が大きく異なるヨーロッパの国々ならわかる。
単なる猛暑対策の意味で日本でやれば混乱するだけの話ではないか。
そもそもプレミアム・フライデーですら早くも掛け声倒れになりつつある。
それを実際に時計の針を動かすとなるとかなりの混乱が生じる。それも年に2度も。
今でも時間がおぼつかなくなっているウチの母などにはまさに酷な話で、
時計の針は夜8時。なのに「西郷どん」が終わってしまっているなんて事態は、
あまりに気の毒ではないか。理不尽に自信を失くしボケを早めるに違いない。
仕事が定時に終わったとする。夜は長いが朝も早い。なんの意味がある。
サマータイムへの変更には金もかかるだろう。損か得かといえば損としかいえない。
オリンピック限定?競技のスタート時間を早めればいいだけではないか。
やめとけ、やめとけ。もう一度いう。なんの意味がある。
2018.08.09(木) ホームランの記憶
こんなホームランを球場で味わえたら最高なのに・・・。
ネットの画像で観た糸井嘉男の一発。
東京ドームの遥かバルコニー席の上の看板を直弾した。
残念ながら、毎回楽しみにしているのだが、糸井の生ホームランをまだ見られていない。
今季、予定あと3試合の球場観戦を予定している。そこは大いに期待したい。
生で見た忘れられないホームランをみっつ挙げるとする。
まず1985年10月6日。神宮球場での掛布雅之の芸術的な流し打ち。
ポールに当てたバットコントロール。21年ぶりの胴上げをぐぐっと引き寄せた。
今も神宮のレフトポールを見るとたまに思い出す(同じポールのはずはないが・・・)。
それから金本知憲の引っ剥がすようなスイングから放たれた弾丸ライナー。
レフトの高橋吉伸が一歩も動かず、観客も一瞬なにが起こったかわからない。
衝撃だった。あれほどスタンド到達まであっという間の一撃は初めて。
それからブラゼルのスコアボード直撃の特大ホームラン。
打った瞬間に思わず「どっひゃあ~」と口に出たのは後にも先にもこの時だけ。
と、ホームランの話をしてみたが、今季のタイガース打線。
もうホームランが見られればラッキーだ。
2018.08.10(金) メッセ好投、福留の一発 ~横浜スタジアム
金本政権誕生を機に「超変革」の名の下に多くの若者たちが台頭した。
高山、江越、横田、陽川、板山、中谷、原口、北條、糸原、大山・・・・・。
それはそれで生え抜きの活きのいいのが湧き出て来たことは喜びたい。
しかし現実はどうか。かろうじてレギュラーに定着したのは糸原だけ。
新人王の高山は低迷し、去年20本打った中谷もすっかりだ。
ファームでそこそこの打撃を見せても、一軍に上がって沈黙する。
金本の我慢が足りないという声も聞くが、
すぐにスランプに陥り、それが延々と長引く。チャンスを生かしきれない。
頭数だけは揃っているので、次を試したくなる。結果、実戦から遠ざかっていく。
この悪循環を脱しきれない限りCS出場などとても覚束ないだろう。
悔しいが村田を切って岡本を開花させた巨人にしてやられている。
今夜の試合だって勝利となる一発を放ったのは福留だ。
福留と彼らの違いといえば答えは明白。スランプが長引かないこと。
スランプが長引くのはコーチにも問題があるのかもしれないが、
ズバリ気持ちが弱いのではないか。気持ちが弱いからチャンスを生かせない。
こんなところで精神論をぶつほど私も強い人間ではないが、
ここぞという場面で力を発揮するための準備の問題でもあるのだろう。
プロ野球選手たるもの観客の歳に関係なく、野球小僧たちの憧れてあってほしい。
ダメさ加減が一般人から共感されるようでは困るのだ。
2018.08.11(土) 待ってました!『ちはやふる』三部作一挙上映
文庫本の上下巻が好きではないように、映画の前後編も大嫌いだ。
あらかじめ前後編でのスケジュールが決められている興行形態は安易に思える。
今の邦画の定番であるコミックの映画化にしても、
原作の巻数を睨みながら、あるいはDVDのセールスを目論見ながらでは、
あまりにさもしいではないか。
『あゝ、荒野』は良作だったが、前後編合わせて5時間も要らなかった。
得てして前後編企画にはこういう弊害がつきまとうのではないか。
かつて岡田茂が『仁義なき戦い』の試写を見て「これはシリーズで行け」と号令する。
これこそが映画興行の醍醐味、気概ではないかと思うのだ。
それでも以前なら前後編一挙上映を多くの名画座が企画したものだった。
今はそういう映画館も減ってしまった。
『64』や『ソロモンの偽証』などその機会を待ち続けているが、
当然のことながらDVD、衛星放送、ネット配信が優先され、下に降りてこない。
その中でも『ちはやふる』の一挙上映は文芸坐あたりがやってくれないものかと、
辛抱しながら待っていたら、ようやく一日だけ文芸坐での上映があった。
かくして午後3時半から夜の10時まで、
かるたに鋭い視線を落とす広瀬すずのドアップを6時間半観続けることとなった。
原作はまったく読んでいない。
ただこの映画のポスターの広瀬すずの表情があまりによかったので、
この映画は気になっていた。何度もいうがネックは前後編だったこと。
確かに広瀬すずの突進力が魅力の大半を占める映画だと思った。
たかが高校生の部活ムービーではあるのだが、
競技かるたをきっちりと描くことでスポーツ映画としても楽しかったし、
コミック特有のケレンをシンクロさせて、独特の世界観を生み出していた。
『がんばれ!ベアーズ』のように「お前ら、ガンバレ!」と思わせたのが成功で、
最初の「上の句」はジャンル映画としてベストだったといえるだろう。
ただ、続く「下の句」は一転抑えたような展開と、少女漫画特有のクサミで失速する。
「みんなで戦う、ひとりじゃない」の押しつけもやや気になった。
やはり封切りで「下の句」単独で観なくてよかったのかと思う。
ただ“孤高のクイーン”松岡茉優の登場が痛快だった。
「下の句」が何とか持ちこたえたのは彼女のおかげだろう。
そして前後編から二年。たっぷり時間をかけて再検証したであろう「結び」。
これは予想を大きく超えて面白かった。
部活ムービーとして後輩への伝承もテーマとなっているが、
登場人物たちと若いキャストたちの成長物語がシームレスにシンクロした。
『がんばれ!ベアーズ』から『ロッキー』のテンションまで昇ったようで、
正直、何度か目頭が熱くなる。
場内から拍手が起こったのは「お前らー、よくガンバッタ!」という賞賛だろう。
2018.08.12(日) あれから33年
日航機墜落事故から33年が経つ。
あの惨事は人生の真ん中くらいで起こったイメージがあったが、
もうそこまでの歳月が流れていたということか。
一番強く記憶していることは、
外回りの仕事が深夜に及び、秩父方面を車で走りながら、
消息を絶った日航機の搭乗者名簿を延々と繰り返すラジオを聴いていたこと。
明け方、御巣鷹山で墜落機体が発見されたわけだが、
案外、近くを走っていたと驚いたことか。
2018.08.13(月) 星稜、またも劇的な敗者に
俗にいう「甲子園の魔物」というやつだろうか。
夏の全国高校野球選手権の2回戦、星稜-済美で魔物が首をもたげた。
試合は八回表終了まで7-1で星稜がリード。
しかしその裏、済美が8点の猛攻で大逆転すると、9回に星稜が追いつき延長へ。
そこまで実家のテレビで見て、親父のいる施設に移動。
今度は親父の部屋のテレビで、延長十三回表に星稜が2点勝ち越したまでを見て帰宅。
星稜が勝ったと思っていたら、なんとその裏、逆転満塁サヨナラホームランとは・・・。
100回大会ということで、メディアで過去の名勝負ベストが企画されている。
私にとっては野球の原体験ともいうべき松山商-三沢が永遠のベストなのだが、
1979年夏の箕島-星稜も忘れることができない。
そもそも中継をリアルタイムで見ずしてマイベストもないだろう。
(有名な横浜-PLも、早実-駒大苫小牧、中京-日本文理もマイベストとはならない)
あの試合は転倒エラー直後の同点ホームラン、延長十六回の同点ホームラン。
箕島の脅威の粘りもあるが、もう星稜は魔物に取り憑かれたのだと思った。
その後の尾藤、山下の両指揮官の友情物語あり、両チームのナインの交流ありと、
あの激闘を彩る様々な“いい話”が添えられていつまでも心に残っている。
甲子園の魔物もいつしか人生の女神に変わることを信じながら、
星稜と済美のナインにもいつか笑顔で語り合える日がくればいいなと思う。
2018.08.14(火) 眠いのは自業自得とわかりつつも
仕事中に際限なく訪れる眠さの原因について考える。
まず私は睡眠障害を疑われている。
疑われるどころか無呼吸症候群と診断されてもいる。
その対処としてC-PAPなる器具が貸与され、口と鼻にあてがって寝てみたが、
こんなものつけてたら熟睡出来んわ!となって突き返した経緯がある。
そんなこんなで睡眠障害ではあるのだろうが、一方で夜中は目がさえる。
その24時間で一番元気な夜中の1~2時にかけて悪魔が来る。
その悪魔の名はYouTubeだ。
何度となくこれにはまって無為な時間を過ごしてきたことか。
「甲子園のスタンドで “ダイナミック琉球” が大流行している」
そんな記事がYahoo!のトピックに載っていたので、早速、YouTubeで聴いてみる。
YouTubeの厄介なところは、そこから色々なチャンネルに派生してしまうことだ。
何故か「トラッキー&ラッキー」のダンスに移行し、
トラッキー繋がりから浜スタに一時期出没していたブラック・ホッシーに。
千葉ロッテのイベントMCのこなつ姉さんとつば九郎やドアラのやり取りを見ていて、
セ・リーグで一番つまらんのはトラッキーとジャビットじゃねぇかなどと思っていたら、
あっという間に時計の針は3時近くに。
今、6時には出勤の仕度をするので、あと3時間も寝られない。
そもそも俺はYouTubeで何を見て、時間を無為に過ごしていたのだろうと激しく後悔。
YouTubeが悪いわけではない。自分に腹が立つだけなのだ。
2018.08.15(水) 瀬々敬久とピンクと大正時代と『菊とギロチン』
映画が好きで気が向いたら映画館に行くのが日常化しているのだが、
それでも90年代から2000年代にかけて映画観賞をさぼっていたので、
その辺りの状況がスッポリと抜け落ちている。
瀬々敬久なんて監督はその典型だろう。
ただ映画館には行かずともビデオ屋をやっていたので、
作品知識はなくても商品知識はあり、これが私の中で何とも歪なことになっている。
瀬々敬久は、佐藤寿保、サトウトシキ、佐野和宏らとピンク四天王と呼ばれていた。
1960年5月生まれなので、私と同学年でもある。
“ピンク四天王”の名称は以前から聞こえていたとしても、彼らは90年代の旗手。
私がピンク映画を観ていた70年代末期から80年代前半とは完全にズレている。
若松孝二からは遅れたが、山本晋也、梅沢薫、稲尾実などのベテランがいて、
渡辺護が大御所として君臨し、高橋伴明、中村幻児あたりが気鋭の若手だった時代。
さらに私にとっての成人映画は日活ロマンポルノであり、
ピンク映画はほぼ暇つぶしと本数稼ぎとして消化していたのが正直なところだった。
だから表題にした「瀬々敬久とピンクと~」などは大嘘で、
瀬々敬久の監督作品はピンク映画も含めて、今夜初めて観ることになった。
『菊とギロチン』の評判は悪くない。きっと評論家受けする監督なのだろう。
映画は大恐慌の大正末期。女相撲の一座とアナーキストたちの出会いを描く。
この時代の暗い世相を背景にした物語はいくつか観てきた。
ざっくりいうと狂乱と退廃の時代。
デモクラシーが席巻すると同時に、各地で米騒動が勃発。アナーキズムが台頭する。
海の向こうでロシア革命が起こり、共産主義化を懸念した政府が治安維持法を制定。
混沌とした社会背景を一気に破壊するように勃発する関東大震災。
エンターティメントとしてはどうかと思うが、映画のテーマとしては百花繚乱の如しで、
大正時代は尖がった作家主義の作り手にとって格好の舞台ではあるのだろう。
・・・「日めくり」に書くには少々テーマが大きくなってしまった。
もう一度いうが私は瀬々敬久と同学年だ。
彼も名画座をめぐり今村昌平『にっぽん昆虫記』、神代辰巳『宵待草』を観たのだろう。
おそらく瀬々の時代への興味は書物より映画によって形作られたのではないか。
女相撲の興行一座などいかにも今村昌平が好みそうなバイタリティ溢れる題材だし、
その女力士とねんごろになるアナーキストなど神代辰巳の匂いがぷんぷんする。
私はそこにある種の既視感を覚えてしまったのだが、実際はどうなのだろう。
主人公の女力士、花菊より朝鮮出身の十勝川が魅力的に描かれるのも、さもありなんで、
映画より、同世代として瀬々の『菊とギロチン』を興味深く観たといったところだ。
それにしても東出昌大。実在のアナーキストをよく演じていたのではないか。
2018.08.16(木) 朝の茶事
以前と比べ、8時には池袋先の職場に到着するようにしている。
小田急の改札まで歩いて5分程度の距離で、
毎朝6時33分発の電車に余裕で間に合わせるため、6時25分には玄関を出るのだが、
これがなかなか思うように行かず、油断すると6時半に出てダッシュする羽目になる。
5時50分に目覚まし。以下、スマホのアラームをスヌーズにして、
6時の「炎の五回裏」、6時15分「あまちゃん」と連続で鳴らしている。
毎朝、トイレに行き、シャワーを浴びて、速攻で着替えるのだが、
これが腕時計を探したり、エアコンが止まっているのを確認するだけで、
時間があっという間に過ぎる。時間の経過がおそらく一日の中で一番速い。
時計代わりのNHKニュースのタイムコードも「あれ?」という間に過ぎていく。
この朝の時間帯のメカニズムは一体どうなっているのだろう。
2018.08.17(金) 早朝の新宿散歩
普段の出勤は7時20分に新宿駅に到着。
そこから定期券で丸の内線の新宿三丁目駅まで行って副都心線に乗り換える。
ただ歩いても10分足らずの距離なので、気が向けば徒歩で朝の新宿の空気を吸う。
空気を吸うといっても朝の新宿界隈はそれほど清々しいものでもない。
夜遊びで朦朧と歩く若者たち、壁にもたれている泥酔客もいる中を、
トランクを転がす外国人観光客が右往左往する。
飲食店、風俗店の店先に生ゴミのポリ袋が舗道を占拠し、
そのポリ袋をめぐって争奪戦を展開する清掃車とカラス。
まるで一夜の喧噪が沈殿し、堆積する臭気と排気ガスに塗れているような朝。
途中、喫煙所で一服。腹が減ったら牛丼屋に飛びこんだりもする。
社会に出てかれこれ35年。
今まで経験したことのない出勤風景はそれなりに新鮮だ。
2018.08.18(土) 命知らずのトム・クルーズ
『ミッション;インポッシブル/フォールアウト』のレイトに行く。
21時からの回が終わってみれば23時半。
エンドロールが出たときには深い溜息が洩れた。疲れたのだ。
トム・クルーズがバスター・キートン、ジャッキー・チェン化している・・・・
56歳がビルを飛び越え、上空7620mからダイブし、ヘリチェイスに挑む。
思わず「あなたバカですか?」といいたくなる。
一体いつから身体能力の限界に挑む俳優になったのだろう。
そもそも『卒業白書』から40年。
その間、微塵も翳りのないままトップスターに君臨し続けている。
かつてここまでのハリウッドスターがかつていただろうか。
それがここ数年でジャッキー・チェン化だ。驚くしかない。
普通、ハリウッドは主演スターにここまでのスタントはやらせない。
実際に怪我で撮影が延期したのだが、しかし完成までやりきってしまう。
それが可能なのはトムがプロデューサーも兼ねているからで、存在が無敵なのだ。
ただ無敵も、それをスクリーンで受け止める同世代のオヤジは、体力がもたない。
非常に情けないが、正直147分の連続アクションはきつかった。
次回作があれば観に行くが、レイトは止めようと思った次第だ。
2018.08.19(日) 岩田その他、ただ背信 ~明治神宮球場
日曜日。久々に監督がメンバー表を交換するところから野球を観る。
普段は平日の仕事帰りの観戦が多く、序盤を見逃がして球場入りすることが多く、
その時点で勝敗の行方が決していることもあるし、
勝ちはしたものの、序盤のリードを後半追い上げられる展開も少なくなく、
殆んど勝利を堪能出来ないで、失点の場面ばかり見せられて終了なんてこともある。
打撃練習からとはいわないが、やはり野球はプレーボールから見るべきだろう。
それは前回の観戦の時も書いたか。。。。
さて先発は岩田と石川という軟投派の対決。
今季の石川は好調だが、打てない投手ではない。
しか私が初っ端から見せられたものは、バレンティンに特大2ランを浴び、
送りバントではゲッツーを喫し、その裏に危険球で退場する岩田の独り相撲だった。
スポーツ新聞でいうところの典型的な「背信プレー」。それも連続だ。
岩田には老獪な投球を期待したのだが、とんだ一杯食わせ者で終わってしまった。
しかも福留の休養日。ただでさえジリ貧の得点力がさらに下げている状況で、
序盤で6点差がついてしまったらまず勝てない。
そんな展開で僅かな光明が、福留の代わりに三番に入った大山だったか。
慣れない外野守備で、俊介に守備位置の指示を仰ぎながら左翼に立つ姿は健気で、
レフトスタンドからすぐ先に大山の大きな背中越しの観戦なので、大山に注目していた。
タイムリーを含むヒット2本は何とか福留の代役を果たしたといえるだろう。
確かに体格は頼もしい。昨秋の泥まみれCSや今季開幕戦でドームでのホームラン。
大砲の素質は十分。しかし当たりが止まり出すと異常に長い。
中谷、江越、陽川、原口そして大山と、若手の長距離砲はそれなりに充実しており、
ときにクリーンアップを任されたりもしているのだが、誰もが規定打席に到達せず、
結局は福留、糸井の大御所頼みの打線となっている。
5-8で迎えた最終回。ノーアウトフルベースと期待を持たせたのだが、
ロサリオが内野ファールフライ、鳥谷ゲッツーで万事休す。
せっかくのチャンスがバッターにとってピンチみたいになっているのは相変わらずだ。
金本の眉間にシワが寄ると打線が委縮し、ベンチも暗くなる。
この流れをぶち破る術はあるのだろうか。
2018.08.20(月) 金足農業、決勝へ!
県立で、しかも農業高校。部員は100%秋田県人。しかも地元中学の野球部だ。
県予選ですらコールド勝ちなし。しかし横浜、近江、日大三を1点差で破ってきた。
近江との準々決勝は、甲子園の歴史に残るであろうサヨナラ2ランスクイズ。
記念すべき100回大会には間違いなく“金農旋風”が吹き荒れている。
「金農」まるでJA農協みたいだが、何とも痛快ではないか。
しかし相手は優勝が既定路線と思われている大阪桐蔭。
我々には奇跡を見ることへの欲求がある。
明日は地元の大阪桐蔭以上に、金足農業に勝たせたい観衆が詰めかけるだろう。
純血東北人で是非とも深紅の大優勝旗をみちのくに。ガンバレ!
2018.08.21(火) 大阪桐蔭、春夏連覇
“金農旋風”が吹き荒れた100回大会も、結果は大阪桐蔭の圧勝。
もともとこの夏の甲子園は「どこが大阪桐蔭を止められるか」が最大の見どころだった。
そんな戦前のテーマを吹っ飛ばした金足農業の健闘は称えられるべきなのだろうが、
「優勝して当然」といわれる中で勝利を積み重ねてきた大阪桐蔭。
それゆえに“金農旋風”のおかげで思わぬ逆境に追い込まれた感もあったが、
いずれにせよ彼らは「甲子園を楽しむ」レベルで試合をしていなかった。その差が出た。
今夏の大阪桐蔭の優勝は「凄み」を以て大いに讃えられるべきだろう。
ただ根尾や藤原といったドラフト上位候補たちにとって、
この連覇は野球人生の大きなステップ、通過点との思いがあるのかもしれない。
そこの辺りが「青春」「完全燃焼」の甲子園幻想を抱くオヤジには複雑でもあるのだが。
2018.08.22(水) 日本ボクシング連盟、全員辞任
スポーツ組織のトップに君臨するオヤジたちの強面には恐れ入る。
先の日大アメフト部の内田前監督もそうだが、
それ以上に日本ボクシング連盟の山根明会長。
あれはどう見ても極道Vシネのパッケージに相応しい顔だ。
問題はどちらもアマチュアスポーツの組織のトップだということか。
反感を買うかもしれないが、プロスポーツならそういうこともあるのかと思う。
とくにボクシングなど格闘興行の世界にはダーティなイメージはあり、
ドブ板を踏み抜くような地の底からこそ、栄光が生まれるのだとの幻想すらある。
それも一方にアマチュアスポーツという清廉な存在があってこその話だ。
この度は「日本ボクシングを再興する会」が頑張ったのだろう、
助成金の不適切使用や判定への介入。世間に「奈良判定」なる珍語が披露された。
内田前監督も山根明会長も暴力団との交際が報道されるとなると完全にアウトだろう。
とりわけ山根会長にはホンモノの匂いがプンプンする。
2018.08.23(木) 上野動物園にシャンシャンを見に行く
パンダ舎の行列はほぼ一時間待ち。
猛暑がやや落ち着いていたのは救いだった。
話題のシャンシャンが竹と奮闘する一瞬は拝むことができた。
2018.08.24(金) 象徴と典型と ~東京ドーム
「巨人は2回裏、1死満塁の好機から山本が押し出し四球を選び、先制点を挙げる。
そのまま迎えた4回には、メルセデスの適時二塁打が飛び出し、追加点を挙げた。
投げては、先発・メルセデスが9回無失点の快投で来日初完封。敗れた阪神は、
打線がわずか2安打と振るわなかった。」(Spots Navi)
・・・・・試合を振り返ると溜息とともにどっと疲れが出る。
0-2の完封負け。しかも僅か2安打。失点は押し出しと投手に浴びたタイムリー。
まさに今季のタイガースを象徴するような試合。
いや、こんな試合ばかりしているのだから象徴的ではなく典型的な試合なのだろう。
とにかく左投手に泣かされ続けている。だからスタメンでズラっと右打者を揃える。
福留はまた休養日か。唯一安定している糸原を外し、植田を起用。糸井以外は右打者だ。
ならばウチの右打者なら左を打てるのか。前提として打てないのだから右も左もない。
もともとメルセデスは被安打が右より左に分が悪いとのデータもあったと聞く。
スコアラーを不祥事で欠いていたとしても、そこは把握していたと信じたい。
確かに大山、糸井、ロサリオ、中谷の並びは魅力的ではある。
しかし「調子がよかったら打てる」「当たればスタンドに飛んでいく」。
所詮、彼らの実績はものすごく確率の低い“たら・れば”なのだ。
そもそも今からどう逆立ちしたって優勝はないし、Aクラスも怪しい。
そうなったとき、我々トラ党の溜飲を下げるには巨人に勝つしかあるまいに。
巨人に力負けしたとはまったく思わない。ただひたすらウチは弱いのだ。
そんな現実を噛みしめるだけに貴重な夏休みを使ってしまった。
2018.08.25(土) 『カメ止め』シネコンへ
アスミックエースの配給で全国公開となり、
場末の上映館からシネコンのスクリーンに拡大した『カメラを止めるな!』。
最初に上映していた池袋シネマ・ロサと新宿K'Sシネマの2館は、
片や池袋の歓楽街のど真ん中、片やヤクザ映画専門の昭和館を立て直したビル。
どちらも環境的には場末感が異様に漂う立地の小屋だった。
それもついこの間のこと。そこから一気に全国のシネコンに拡がったのだから、
これほどわかりやすく痛快なサクセスストーリーもない。
先日オープンした日比谷のTOHOシネマズで、出演者たちが舞台挨拶を行い、
観客席とスクリーンの巨大さに、全員が舞い上がってしまったと聞く。
しかし「カメ止め」は「カメ止め」だ。インディーズもメジャーもない。
むしろ品川プリンスのシネコンを一気に場末の小屋にしてしまう力は健在だった。
そしてツレを伴ってこの映画を観るのは本当にヤバいことが判明。
クライマックスで涙腺が決壊。上映後に映画を熱く語りたかったが、
自分の言葉に声が詰まり、目に涙が溜まってきて大いに困ってしまった。
2018.08.26(日) 『ボディガード』と『グリース』と
「午前十時の映画祭9」。昨日今日で『ボディガード』と『グリース』を観てきた。
『ボディガード』は今の今まで未見だった。
思い出すのは外回りの営業をサボって観てきた後輩から、
「ホイットニーの歌を聴きに行っただけの映画」との酷評を聴いたこと。
私はそこまで主題歌の「オールウェイズ・ラヴ・ユー」は印象に残らなかったが、
ケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストンの「世紀の共演」の鮮度は気になった。
2人の全盛期は80年代半ばから90年代まで。
当時、ビデオとCDのレンタル屋をやっていたので2人の人気の凄さはよく知っている。
まさしく映画と音楽でふたりはトップランナーであり、スーパースターだった。
その全盛期で共演が実現した『ボディガード』は何十本と棚に並べてもフル回転だった。
それが2000年代に入ると両者は急激にブレーキがかかって失速してしまう。
ケビンの映画は小粒化し、薬物常用のホイットニーは2012年に急死する。
今『ボディガード』を観ると、内容より「世紀の共演」ありきの映画なのかと思う。
なにせ白人ボディガードと黒人シンガーがデキてしまう物語にも関わらず、
そこに人種の葛藤が一切描かれていないのは大いなる違和感だった。
人種よりも先ずはスーパースター同士のラブストーリーということなのだろう。
厳密にいえば映画はサスペンスアクションのジャンルなのだろうが、
前世紀のクオリティといってしまえばそれまでだが、
サスペンスもアクションも凡庸な描写に終始している。
その意味で「オールウェイズ・ラヴ・ユー」だけの映画だという後輩の感想は正しいのか。
一方、オリビア・ニュートンジョンとジョン・トラボルタ共演の『グリース』。
この映画は高校を卒業したての浪人時代に観た。
自分の高校生活と比べ、アメリカのハイスクールの明るい破天荒ぶりが羨ましかったが、
今、観直してあまりにも脳天気過ぎて、こんなものを羨ましがっていたのかと苦笑する。
こちらは売り出し中のトラボルタと人気が落ち着いたオリビアの共演だったが、
この2人で高校生をやってたのかと思うと、再び苦笑してしまう。
2018.08.27(水) エアコン風邪ひいた
喉が弱くて、風邪をこじらせると喉に炎症が起こる。
まだそこまでは酷くはないが、くしゃみが止まらない。
明らかに夏風邪をこじらせたようだ。
やはり朝まで冷房フル稼働がよくなかったのだろう。
私の場合、くしゃみがかなりダイナミックなものだから、
周囲が完全に引いている。
このクソ炎天下でマスクをするのはあまりにも暑苦しいが、仕方がない。
今さらなのだと思うが、気安めに葛根湯を飲んでフテ寝した。
もちろん冷房をガンガン効かせて。
2018.08.28(火) まるちゃん、ウソでしょ・・・
この表題は今朝のスポーツニッポンの一面から。
各スポーツ紙の一面すべてにおしゃまなまるちゃんの顔が並ぶ。
さくらももこさん53歳死去。乳がんで闘病中だった。
あまりの突然の訃報に、ほんと、心の底から「まるちゃん、ウソでしょ・・・」。
私も「ちびまる子ちゃん」のファンだった。単行本はほぼ読んでいる。
熱心なアニメの視聴者でこそなかったが、たまに日曜夕方を楽しませてもらっていた。
なにが悲しいって、あの唯一無二の感性が世の中から突然消えてしまったこと。
エッセイや作詞でみせた彼女自身の等身大をそのまま投影してみせた才能も、
「さくらももこのオールナイトニッポン」での喋りも楽しかった。
今年、多く聞いた有名人の訃報に差をつけるのは不粋だが、53歳の若さが悔しい。
この人ほどばあさんになってからの老境を描いて欲しかった作家もいないだろう。
「ありゃ?まる子、案外と早く死んじゃうんだね、、、、悲しいね」
と勝手にTARAKOの声で台詞を想像して、涙が止まらなくなった。
2018.08.29(水) 弱り目に血尿
夜中のトイレで真っ赤な小便が出た。
「がーん」…・・・また来たか。
腎臓のカルシウムの壁からポロリと剥がれ落ちて小石となって。
尿路に迷い込んだに違いない。
よりによってこんな時に。
これで何度目だ。
そら、腹がしくしく痛み出してきた。
これで腹に何か入れようものならどエライことになる。
ひたすらじっとしているのみ。
尿路結石は経験がものをいう世界だ。
2018.08.30(木) 今度の結石は膀胱あたり
仕事を早退させてもらって総合病院へ行く。
レントゲンの結果、5㎜程度の結石が膀胱付近をさまよっているという。
尿路結石・・・で良かった。というかとうとう結石に対してこの境地に達した。
血尿の原因には腎梗塞、腎腫瘍、腎がんやらと恐ろしい病名が出てくる。
尿路結石で済めば御の字ということだ。
例によってロキソニンと座薬が処方され、しばらくは持参することになるのだが、
5mmなら自然に石が流れるのを待つのみ。
後輩は尿管にカテーテルを入れられ地獄の日々を過ごしたのだという。
それを思えばどうってことはない。
そもそもこの「日めくり」には血尿は風物詩のように出てくる。
情けないちゃ情けないが。
2018.08.31(金) いやいや面白いぞ『検察側の罪人』
雫井脩介の原作は読んでいない。
ただ最初に『検察側の罪人』というタイトルから想像したのは、
アガサ・クリスティの戯曲『検察側の証人』をお手軽にパクった代物かということ。
その『検察側の罪人』が木村拓哉と二宮和也で映画化され、原田眞人が監督した。
一部で悪評が目立つようだが、私には見応え十分だったし、
キムタクもニノも良かった。なにより原田親子による演出、編集が秀逸だった。
「ただ映っているだけの人物」がいないので画面が詰まっているのも悪くない。
確かに主人公の最上に旧日本軍のインパール作戦による「白骨街道」のイメージや、
友人の告発や自殺まで背負わせたことはストーリー上のノイズと映る。
しかしエピソードが重層的に、ときに拙速と思える頻度で繰り出される饒舌さは、
最上を徹底的に追い込んでいき、背負うものの重量を膨張させていく。
それがゆえ彼の先鋭的な〈正義〉が突出させていく様を我々は知ることとなるのだが、
それでいてリーガルサスペンスならではの法廷場面は一切ないのは、
最上が所有するガベル(小槌)のコレクションにすべてを集約させたのだろう。
何かと物議を醸しているエンディングにも、むしろ描かないことの不気味さを感じて、
今年のベストワン級とまではいかないが、松重豊と酒向芳は十分に助演賞候補だろう。
こういう「本気」の日本映画に出会えることは何よりも嬉しい。
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